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不屈のトンコリ

10数年前、初めて自力で札幌のギャラリーを借りて、個展を開催した。その時に、知り合いのピアノ調律師が、大きな風呂敷を抱えてやって来た。




僕は風呂敷の中身がトンコリである事を瞬時に見抜いた。すると、そのピアノ調律師が、僕にそのトンコリを手渡し、出所は言えないが、このトンコリを使って欲しいと手渡してくれた。




そのトンコリには作者の名前が彫り刻まれていた。出所も全て理解した。1986年に常呂町で制作されたトンコリ。




僕にこのトンコリを手渡してくれたピアノ調律師は網走出身。このトンコリが生まれ、彷徨ったストーリーが頭の中でグルグル回った。




そして、最後の旅路でこのトンコリは僕に手渡された。美しいトンコリ、人が使った形跡が全く無い。つまり、誰にも相手にされて来なかったトンコリ。




寂しかっただろうね。僕は直ぐにメンテナンスし、チューニング作業に入った。美しい歌声でトンコリは答えてくれた。




もう僕の所に来て10数年になる、このトンコリ。何か僕のバイブスが悪い時に、チューニングが狂ったり、壊れたりする。トンコリからのメッセージなんだよね。




そんなトンコリが数日前、チューニング作業中に、弦巻き棒が折れた。初めての経験でプチパニックに陥った。




なんとか弦巻き棒を、強力接着剤で固定し乾燥させた。そして昨日、弦巻き棒をトンコリに戻し、チューニングすると、美しい歌声で答えてくれた。




何十年もほったらかれされて来たトンコリ。幾度となく故障を繰り返しても復活するトンコリ。




今回の復活は人間で言えば、骨折。痛かったろうにね、それでも僕を使って復活する、不屈のトンコリ。




不屈のトンコリだけど、作りは華奢なんだよ。今回の復活劇からもいろんなメッセージをトンコリから受け取った。




長い時間をかけて、寂しい時間と空間から、僕の所に辿り着いたトンコリ。とても愛おしいよ。




このトンコリのメンテナンス&チューニング作業はもう少しで完了かな、トンコリからメッセージを受け取り作業する。トンコリとの時間と空間。チューニングが狂うから生まれる、新たなチューニング。




本当に多くのメッセージをトンコリから受け取っています。ソンノ、イヤイライケレ〜。








今日も最後まで読んでくれて、イヤイライケレ〜




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